君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
「文句、ありますよ!弥太郎さんみたいな性格の人は一人で十分です。


でも、一人はいてもいいから……


あのっ。病気はもう大丈夫なんですか?命に別状はないんですよね!?」


『馬鹿か。現代の医療を舐めるな。見ての通り、声以外は問題ない』


「そっか……良かった」


『今のお前の方が余程弱っている。長い話をして悪かった。もう寝ろ』


そう言った弥太郎さんは照明を落としてベッドルームを後にした。


今日は辛い一日だったけど、弥太郎さんに救われたな……。


弥太郎さんの話は、私への回りくどい慰めだったのかもしれない。弥太郎さんだって失恋しているのに、変な所で優しい人だ。


あまり似てないように見える二人だけれど、近くで弥太郎さんを見ると、スッとした顎のラインや整った鼻筋、少し大きくて形の良い唇は澪音とそっくりだった。

違うのは瞳の印象だけだ。アーモンド型の大きな瞳の澪音と、切れ長のシャープな瞳の弥太郎さん。


できるなら、これからも兄弟が仲良くいられますようにと願って眠りにつく。


私がそばで見ることはもう無いけれど、遠い世界で澪音を応援しているから。


明日には、このお屋敷を出るつもりだ。
< 83 / 220 >

この作品をシェア

pagetop