君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
飛び込むように部屋に入った澪音を見て息を飲む。
澪音のネクタイとシャツが半分ほど赤紫に染まっている。弥太郎さんも驚いたように顔をしかめた。
「お見苦しくてすみません。
あの有名な洗礼を受けてきました。青山会長は噂に違わず面白い方のようで」
青山会長というと、かぐや姫のお父さんだ。確か、怒るとワインをかけることで有名と聞いたような……。
兄弟間の会話なのに、澪音は随分とかしこまった話し方をしている。それに、いつもより張り詰めたような表情だ。これが仕事モードの澪音なのかな。まだ見たことのない顔に、ついドキドキしてしまう。
『父様がついていながら、どうしてそんなことになる。
新エネルギー開発事業の件か?』
「違います。昨晩から俺の独断でお会いしてきました。
かぐやの件で」
かぐや姫の件……澪音の口から「かぐや」と聞くとやっぱり胸が痛い。
ワインをかけられたのは、よくある『お嬢さんをください』というやり取りの結果だろうか?しかし、婚約しているのにそれも変な話だ。
「お父様があまりに頑固なので、外堀から埋めることにしたんです。
洗礼は受けましたが、最終的には理解して貰えましたよ。
正式に俺とかぐやの婚約を、破棄してきました。」
『何をしている、今すぐ謝罪して撤回してこい。
青山家との関係悪化がうちにとって大きな痛手になることぐらい、分かるだろ』
「ですから。
最終的には理解して頂いたと言ったじゃないですか。
確かに大きな損失も生みましたが、俺としては一番良い解決をしたと自信を持っています」
ギラギラと目を光らせて、一歩も引かずに弥太郎さんに畳み掛ける澪音は、私の知らない人のようだった。
澪音のネクタイとシャツが半分ほど赤紫に染まっている。弥太郎さんも驚いたように顔をしかめた。
「お見苦しくてすみません。
あの有名な洗礼を受けてきました。青山会長は噂に違わず面白い方のようで」
青山会長というと、かぐや姫のお父さんだ。確か、怒るとワインをかけることで有名と聞いたような……。
兄弟間の会話なのに、澪音は随分とかしこまった話し方をしている。それに、いつもより張り詰めたような表情だ。これが仕事モードの澪音なのかな。まだ見たことのない顔に、ついドキドキしてしまう。
『父様がついていながら、どうしてそんなことになる。
新エネルギー開発事業の件か?』
「違います。昨晩から俺の独断でお会いしてきました。
かぐやの件で」
かぐや姫の件……澪音の口から「かぐや」と聞くとやっぱり胸が痛い。
ワインをかけられたのは、よくある『お嬢さんをください』というやり取りの結果だろうか?しかし、婚約しているのにそれも変な話だ。
「お父様があまりに頑固なので、外堀から埋めることにしたんです。
洗礼は受けましたが、最終的には理解して貰えましたよ。
正式に俺とかぐやの婚約を、破棄してきました。」
『何をしている、今すぐ謝罪して撤回してこい。
青山家との関係悪化がうちにとって大きな痛手になることぐらい、分かるだろ』
「ですから。
最終的には理解して頂いたと言ったじゃないですか。
確かに大きな損失も生みましたが、俺としては一番良い解決をしたと自信を持っています」
ギラギラと目を光らせて、一歩も引かずに弥太郎さんに畳み掛ける澪音は、私の知らない人のようだった。