君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
澪音の言葉に、私は雷に打たれたように動けなくなる。


嬉しすぎて信じられなくて、幻聴なんじゃないかと思った。本当の気持ちなら嬉しいけど……どうして……


でも……


これからも他の女性を避けるために、使い勝手のいい私を手放したくないだけかもしれないし……


頭の中がぐるぐるしたまま二人の様子を窺うと、弥太郎さんが見たこともないような嬉しそうな顔で微笑んでいた。


『お前が我を通すことなんて、これまで無かったな』


「え? そうでしたっけ……?」


『澪音はこれ以上、何も諦める必要などない』


驚いたことに、弥太郎さんは澪音の背中に腕を回して外国人のようなハグをした。澪音にとっても意外な行動だったようで、顔をしかめて体を仰け反らせていた。


「兄さん? なにコレ!? 普段の性格と違い過ぎるんですけど……!

驚かせて誤魔化そうとしてませんか?

これで柚葉のことをウヤムヤにしようったって、そうはいきませんからね」


必死の顔で訴える澪音に、弥太郎さんは堪えかねたように吹き出す。それからバスルームに隠れている私をちらっと見て、ホワイトボードに大きな文字を書いた。



『澪音は大きな誤解をしているようだから、言っておく。

俺はお前と違って、人間の女にしか興味が持てないんだ。』


あ、ひどい。


毎度ながら酷すぎる物言いに、私はひとりでバスローブの袖をばたばたとはためかせた。


弥太郎さんは、ほんっとにいつもいつも……!!



一方、澪音は「え?」と、弥太郎さんの意図を飲み込めていないようだ。
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