君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
視線がぶつかると、顔が熱くなるのが分かった。多分、私の顔は今真っ赤になってる。


澪音は嬉しそうに笑って続けた。


「嫉妬する程度には俺にも気があるなら、今は俺にゆだねて。

失恋なんかすぐに忘れさせてやるから」


ん? 失恋……?


「澪音、そのことなんですが……


うわぁっ!」


説明しようとしたら、澪音が踵を持ち上げて爪先に唇をつけたので、色気の欠片もない悲鳴をあげてしまった。


「今は何も言うな。

相手については想像ついてるんだ。これ以上俺を妬かせないでくれ」


「その想像は、多分違っ……ぁ」


足の指先に澪音の温かな熱を感じて身を竦める。動けないでいると、唇は甲をすべり足首で止まった。


「最初に俺を誘惑したのはこの足。

踊る柚葉に見惚れていた」


「……っ。ダンサーの足なんて、マメはできるし酷い見た目で……近くで見ないでくださ……っ」


「恥ずかしがることはない。柚葉がこれまで注いできた情熱の証だ。

こんなに美しいのだから自信を持て」


澪音は脹ら脛を持ち上げて、足の脛にもゆっくりと唇をつけた。


「ピアノを弾く澪音の綺麗な手とはっ……違うからっ。

筋肉質で、女らしくなくて」


「柚葉はまだ自分を知らないんだな。ダンスとは全身を使った芸術だろう?

自分の魅力については自覚しておいた方がいい。かつては芸の道を志した、俺からのアドバイスだ」


澪音は反対の足も同じようにいとおしみながら、淡々と話していた。
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