直さんと天くん
05
その日は夜勤だった。
深夜の店内、入り口から入って来た男は、黒い帽子を目深に被り、マスクをつけて、深夜なのに濃い色のサングラスをかけていた。
今思えば、あからさまに怪しい格好なんだけども、接客してるとたまにそんな格好したお客さんもいるから、その時は特に警戒することなく見過ごしてしまったのだ。
なにより、こんな平和な住宅街にある小さなコンビニで、そんなことなど起きるはずがないと高を括っていたのだ。
そんなこと、とはどんなことなのかというと。
「金を出せ」
「……はい?」
冗談か、もしくは聞き間違いだと思った。
だってそんなセリフ、テレビドラマの中くらいでしか聞いたことがない。
まさか、いやいや、そんなまさか、そんなベタな、いや物騒な。
両目と口をぽかんと開け、首を傾げた状態で固まった私に、男は焦たようにポケットから刃物を取り出して見せた。
「金を出せと、いってんだ…!」
顔の前に突きつけられたナイフが、天井の蛍光灯の光を受けてキラッと輝く。
…いったいどうしてこんなことになったのか。
話は数時間前に遡る。
深夜の店内、入り口から入って来た男は、黒い帽子を目深に被り、マスクをつけて、深夜なのに濃い色のサングラスをかけていた。
今思えば、あからさまに怪しい格好なんだけども、接客してるとたまにそんな格好したお客さんもいるから、その時は特に警戒することなく見過ごしてしまったのだ。
なにより、こんな平和な住宅街にある小さなコンビニで、そんなことなど起きるはずがないと高を括っていたのだ。
そんなこと、とはどんなことなのかというと。
「金を出せ」
「……はい?」
冗談か、もしくは聞き間違いだと思った。
だってそんなセリフ、テレビドラマの中くらいでしか聞いたことがない。
まさか、いやいや、そんなまさか、そんなベタな、いや物騒な。
両目と口をぽかんと開け、首を傾げた状態で固まった私に、男は焦たようにポケットから刃物を取り出して見せた。
「金を出せと、いってんだ…!」
顔の前に突きつけられたナイフが、天井の蛍光灯の光を受けてキラッと輝く。
…いったいどうしてこんなことになったのか。
話は数時間前に遡る。