直さんと天くん
そう決めて、翌日。
また言いそびれる。


そのまた翌日。
またまた言いそびれる。


返事し損ねて4日目。
ついに開き直り始める。


もうさ、告白の返事なんかしなくてもいいんじゃねーかな!


だって前から、直さん大好き〜とか言ってたし、ハグしてきたり、おまじないとか言って額にキスしてきたりしてたし、それを私が嫌がらなかったってことは私も天くんが嫌いじゃない、つまり好きだってことで伝わってるんじゃないか?

それか、秋桜畑からの帰りのバスで寝てたのは実は狸寝入りで、私が返事したのが聞こえてたから、何も言ってこないんじゃないか?

そうそう、きっとそう、そうに違いない。それでいこう。


…って、そうじゃない。わかってる。


そうすると次は話を切り出せない言い訳がスタートする。

だって、だって返事きいてこねぇんだもん、あいつ!
私に告白したのもキスしたのも忘れたんじゃないかってほど、なんにも言ってこねぇんだもん!!

きいてくれたら言えるのに!私も天くんが好きだよーってさ!
きけよ!ききにこいよ!なんで何も言ってこないんだよ!

なんでそんな、何も変わらない、いつも通りの態度なんだよぉー!!


…と、心の中では叫んで地団駄踏んでみるものの…。

もし天くんの態度が変わったら変わったでそれも困る。
よそよそしくされたら嫌だし、かといって急に今日から恋人モード!って感じにされても戸惑うだろうし。

要するに今はまだ、この関係を維持していたいのだ。

その一方で、天くんに対して罪悪感みたいなものも感じていた。

天くんは、ちゃんと言葉にして、私に好きだと伝えてくれたのに、私は何も伝えていない。

自分だけ気持ち伝えないで黙ってるなんて、ずるいよなぁ…。


面と向かって、私も天くんが好きだよって、言えたなら。

きっと天くんは喜ぶだろうな。

嬉しいって笑うんだろうな。


喜ばせてやりたいって思うけど、会えばいつも通り、他愛ない話ばかりで、告白の返事が言い出せない。


もうちょっと、このままでいさせてほしいんだ。待っててほしいんだ。

勇気がなくて、前に進めない、ずるくてダメな大人でごめん。

いつか言うから。そのうち言うから。絶対。
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