直さんと天くん
それから授業を隣同士で受けるようになり、だんだん昼食や休憩時間も一緒に過ごすようになっていった。
亜蘭は知ってみると、気楽でなんだかんだ一緒にいて楽しいヤツだった。
亜蘭にとっても同じだったようで、私達はいつしか学校がない日も食事や遊びに行くようになった。


そして大学二年の夏の終わり、花火大会の後の居酒屋でのこと。

『なぁ直〜』
『なんだよ亜蘭、あっ店員さんすみません烏龍ハイのおかわりお願いしま…』
『俺達マジで付き合わない?』
『…酔ってんのか?』
『俺が酒強いの知ってるだろ』
『意識はハッキリしてるようだな…』
『酔ってノリで口説いてるわけじゃねぇよ。いつ言い出そうかって、ずっと考えてた。
今日も、その前も。もう随分前から、言おうと思ってた…。
マジで、おまえのこと、好きになった』

大きな目が瞬きもせずまっすぐ私を見つめていた。
グラスの中の氷が溶け落ちてカランと音が鳴る。

『え…え〜っと……』

突然の告白に、驚き戸惑って何て言ったらいいかわからなかった。
亜蘭のことは嫌いじゃない。いいヤツだし、むしろ好きだ。
でもそれは人として、友達として好きだというわけで、男として、恋愛対象として好きかどうかというと…よくわからない。

……でも待てよ?
考えたことはない、けど、心のどこかでこうなってもいいと思っていなかったか?
一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、亜蘭を知れば知るほど、
亜蘭なら、亜蘭とだったら、恋愛になってもいい、なれるかもしれない……そんな思いが頭を過ぎる瞬間が一度や二度はあったのも事実だ。

でもそれってやっぱり友達として好きだという感情を恋愛感情だと勘違いしたんじゃないか?
本当に私は亜蘭が恋愛対象として好きなのか?

ダメだ、頭の中がとっ散らかってて考えがまとまらない…!
こういうことは真剣に、よく考えてから返事をしなくちゃ…!

『あ、亜蘭…悪いけど、ちょっと、考える時間を……』

二、三日よく考えてから返事をしたい。そう伝えようとしたその時、テーブルの上に置いた私の手を、亜蘭の大きな手がそっと包み込んだ。

『俺のカノジョになってよ、直』

亜蘭はテーブルの向かい側から少しだけ身を乗り出して、顔を傾け、私にキスした。

顔のいいヤツって怖い。
気がつけば魔法にかけられたようにゆっくりと首を縦に振っていた…。
< 27 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop