仮面をかぶった王子
多数決なんて、やる必要ないでしょ。
そう思いながらもさっきカフェやりたい、って言ってた子が可哀想だと思った。
チラッと彼女を見ると、唇を噛み締めた険しい顔でうつむいている。頑張って勇気を出して発言したのに、本当に可哀想。
そう思いながらも頬杖をつきながら小草の話を聞く。
「では、カフェがいいと思う人」
教室がしいん、と静まり返る。
誰も手が上がらない。私も、あげない。ここであげるとしたら、空気が読めないバカ男子ぐらいだろう。
ここで手をあげたら、クラスの頂点に君臨する平崎さんの機嫌を損ねることになる。
「0人ですか?……わかりました。それでは、念のために聞きますが、劇をやりたいと思う人は手をあげてください」
小草の声を合図に、「はーいっ!」とみんなが手をあげる。もちろん、私も。
小草は一息つくと、黒板の「劇」と書かれたところに赤いチョークで丸をした。
「今年のクラスの出し物は、劇に決定しました。何をするか、や脚本は、明日のホームルームで話し合いましょう」
この小草の一言によって、今日のホームルームは終わった。