仮面をかぶった王子
鞄を肩に持ち直した小草が空を仰いで言った。
「あー、青い空がはっきり見える。キレーだね。あっ、那望、見て!飛行機雲がある!」
「ん、どこ?」
青い空とにらめっこする。
「ほら、あそこ!」
「んーー…………あ、あった!ほんとだ。でもちょっと崩れてない?」
飛行機から伸びている飛行機雲は、少し崩れていた。
「んー、そうかな?結構綺麗じゃない?」
小草の答えに「そうかなー」と言いながら歩いて行く。
こんな日常が毎日続いてほしい。たわいもない話をしながら、登校していくようなこんな日々を。
「そーいえば、もう文化祭だねー。あと一ヶ月半ぐらい?」
「うん、そうだね」
夏休みが終わって一週間が立つ。もうそろそろ、文化祭の準備が始まる頃だ。たぶん今日のホームルームぐらいには話があるだろう。何をするのか、とかね。
初めての文化祭だから緊張してしまう、と言うわけではない。どうせ中学と同じような感じでしょ。
「楽しみ?」
小草は小さく首を傾げて呟いた。
「んー?文化祭?」
鞄の取っ手をいじくりながら聞く。