仮面をかぶった王子
小草の声で、少し教室がしいんと静まり返る。
みんな、真剣に考えているみたいだ。
「はい……」
少し弱々しく手をあげたのは、少し地味めの女の子。
「どうぞ」
小草に指されおずおずと答える。
「あの、えと。カフェ、はどうですか?みんなで協力できるし、料理とか、喜んでもらえたら、嬉しい、だろうし」
「カフェ、という意見がありましたが、どうですか?他に意見はありませんか?」
「いいんじゃねー?」
「さーんせー」
と、続々と声が聞こえる。いかにもめんどくさそうな声。
小草は少しため息をつき、とクラス全員を見回して言った。
「本当にいいんですか?」
呆れたような、馬鹿にしたような、そんな声。なんか小草って、学級委員になると、キャラ変わるんだよね。頼りになるっていうか。
「はーい」
可愛い声で手をあげたのは、前の席に座っている平崎さんだった。平崎さんは細くて、カタン、と鏡を置いて立ち上がる様子が後ろにいる私からもはっきりと見えた。
「劇がいいと思いまーす。理由は、みんなに感動して帰ってもらいたいしー。私たちのおかげで別れそうなカップルが復縁したらマジサイコーだし。泣いてくれたらうれしーじゃない?みんなも」
平崎さんは、モテている。大人っぽい美人だし、性格はなんていうか、少しSっぽくて、しつこくなくて、クールっぽくて、高嶺の花って感じ。好きというか、男子たち、そしてノリが良いので女子からも憧られている。
そんなキラキラ女子が意見を言ったのだ。
「賛成ーっ!」
「もう決まりでいいと思いまーす!」
「劇ロミオとジュリエットやろーぜ!もちろん平崎さんがジュリエットで、ロミオは俺」
「なに言ってんだよ、俺がやる!」
「なんだとお?」
もうお祭り騒ぎ。