ヤンデレくんとツンデレちゃん
――あたしの心の声が、漏れたのかと。
そう思わせるような台詞が聞こえてきた。
(……今の声は、)
「そんな性格も見た目もブスだからめぐむにかまってもらえないんだよ、あなたたちは」
「なによ……」
「行こ」
しんと静まり返る。
嵐が去ったみたい。
個室から出ると、そこには未兎くんがいた。
「……いたの?」
あたしを見て、つぶやく。
「ここは女子トイレだよ、未兎くん」
「それが?」
なんでそんなに堂々としてるの。
「ありがとう。かばってくれて」
「なっ……、別にかばったつもりないし」
焦る未兎くんが可愛すぎる件。
この子、ほんとに男の子ですか……?
「未兎くんは衣装作り手伝ってくれてるんだよね。器用だね、さすが」
「くんって呼ぶな」
「ごめん。未兎ちゃん」
「……未兎でいい」
「わかった。未兎」
「っ、」
「なに?」
「なんでも……ない」
「ちょっと顔赤くない?」
「なんでもないし。ほら、戻ろうよ」
「うん。そうだね」