ヤンデレくんとツンデレちゃん
◇
「……で? 愛のこと連れて出て来なかったっていうの?」
イライラしたように、車内でタバコをふかすスーツ姿の女。
車は梁の家から200メートルほど離れた場所に停められている。
「はい」
半分あけられた運転席のガラス越しに会話する少女。
「あのねぇ。私がなんのためにあなたを愛のそばに置いてるかわかってるの?」
「もちろん。愛様を“見守る”ためです」
「なら、板野梁との仲をとりもつようなことしてどうするの」
「お言葉ですが、玉城さん。板野梁と愛様は、相性抜群だと思いますよ?」
「どこが。家柄だって……」
「そんなの関係あるのでしょうか?」
「あるに決まってるでしょ」
「見ていて思うんです、わたし。愛様は板野梁といるときが一番幸せそうだなって」
「そんなの闇雲家の将来に必要ない」
「そうでしょうか」
「あんたの意見なんていらないの。余計なことしたら切るわよ……!」
「……わかってますよ。玉城さん」
「まったく。あなたといい。花澤さんとこの坊ちゃんまであんな格好してまとわりついてるし。板野梁のなにがそんなにいいの」
「…………」
少女には思うところはあったが、それ以上、玉城に意見することはなかった。