ヤンデレくんとツンデレちゃん
*
「5分後にリハ始めまーす!」
――そしてついに、リハーサルのときがきた。
「大丈夫、梁ちゃん。いっぱい練習してきたんだから。リラックスしよ?」
「……うん」
愛の言葉は、なんだかんだいつもあたしを安心させてくれる。
「楽しみだね」
「んー……」
「熱いキスをかわそうね」
「フリだよ?」
「止められるかなぁ〜」
「止めろ」
余裕たっぷりだなぁ、愛は。
人生で緊張したことあるのかな?
あたしは台詞が全部飛んでしまいそうなのに。
「だけど今になってちょっと嫌になってきた」
「は?」
「見て」
鏡の方に顔と身体を向けられる。
衣装を用意してくれたのは、愛。
着せてくれたのは千穂。
「可愛すぎるよねぇ」
「……っ、」
うしろから、抱きしめられる。
「このままボクだけのジュリエットでいて欲しいなぁ」
「なにいってんの今更」
「独り占めしたい、すごく」
「……あのねぇ……」
「今すぐ見えるとこにいっぱいボクのシルシつけたい」
「名前でも書く気?」
「……違うよ」
「は?」
「お子様だねぇ、梁ちゃんは」
「いやいや。あんたに言われたくないから」