ヤンデレくんとツンデレちゃん



 *



「「お疲れ様!!」」


リハーサルだというのに本番さながらのテンションでハグし合うクラスメイト。


「板野さん」


――!


あたしに声をかけてきたのは、たぶん、トイレで嫌味言ってた子たち。


「なに……?」


演技にケチつけられるのかな。

ダメ出しなら聞き入れて前向きに活かさなきゃだけど……。


「すごいよかった。ジュリエット」


――え?


「うちら、ほんというと板野さんより未兎ちゃんにして欲しかった」

「板野さんやるくらいならあたしらでもいいじゃんってムカついたし、全然期待してなかった」


ハッキリいうなぁ、おい。


「だって板野さん、最初ジュリエット役するの嫌がってたし」


――!!


「いつも無表情な板野さんに演劇が向いてると思えなかった」

「だけど練習重ねるたびに上手になってて。頑張ってるなって思った。さっきのリハすごく可愛かったよ。恋する女の子って感じで」

「せつなげな表情みてると泣けちゃった」


(みんな……)


あたしにも原因があった。

最初からやる気出してれば、気まずくならなかったのかもしれない。


みんなも、不安だったんだ。

みんな、成功させたかったんだ。


「ジュリエットは板野さんしかいないと思う」

「めぐむくんにも、板野さんが似合ってる。悔しいけど」

「本番も、この調子で頑張ってこうね」
< 199 / 296 >

この作品をシェア

pagetop