ヤンデレくんとツンデレちゃん


「板野、変わったよね」


――あたしが、変わった?


「はは……あいつに毒されちゃたかな。たしかに、たまに自分でも引く思考回路してたりするかもしれない最近……」

「違う。よく笑うようになった」

「……!!」

「入学式で見たときの印象だと、もっとクールな子なのかなと思ってた。でも今は、板野“らしさ”が出てる。板野がそんな風になれたのって、あいつのおかげなのかな」

「…………」

「ほんとはわかってた。あいつには、かなわないって」

「御影くんは、素敵だよ。みんな御影くんのことすごく……」

「みんなとか、どうでもいいよ」

「え?」

「板野の一番になれなきゃ意味がない」

「……!!」

「すごい好きなんだけどな」


――ガバっと、正面から抱き寄せられる。


「やっ……、御影くん、離して」

「もし俺が」

「……?」

「もし、俺があいつより上手いキスしたら流されてくれる?」

「ば、バカなこと……言わないで」


顔、近い。


「本気だよ」

「一方的に気持ち押し付けちゃダメ」

「あいつだって最初はそうしてた」

「……っ、」

「欲しいんだ。板野が」

「ごめん。御影くん」

「俺じゃダメ?」

「……ごめん……」


持ち上げられた顔を精一杯背けるようにうつむいた。


「わかった。じゃあ、返す」


――え?


御影くんが、あたしの後ろを見てる。


振り返ると……


そこに、愛がいた。
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