ヤンデレくんとツンデレちゃん


「坊ちゃん、勘弁してくださいよー」


はっぴを着た店番のオジサンが苦笑いする。


「取れた分だけ連れて帰れるんじゃないの?」

「それはナシです」

「ふーん」


なにやら2人は顔見知りのようだけど……。

そうか。ここ、愛のお父さんの下請け会社がやってるお祭りだもんね。


「ほら、梁ちゃんもやるよ」

「え。あたしはいいよ……」

「ボクに負けるの怖いんだ?」

「はぁ!?……ち、違うし」


ここは、想い出の場所だ。

お父さんとお母さんとの、想い出の場所。


だから、思い出さないようにしていた。

一緒にいた頃の記憶はいいことも悪いことも、封印していた。


「蓋なんてしなくていいのに」

「え……?」

「楽しい想い出にまで蓋しなくていいよ」

「…………」

「ボクとの想い出も加えておいて」

「……あんたってヤツは」

「さぁ。勝負だ、梁ちゃん」
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