千秋先輩。その鈍感、本気ですか?
「…昨日のこと、覚えてる?」




お姉ちゃんが遠慮がちに聞く。

ってことはやっぱり昨日のことは夢じゃないんだ。





「公園でうずくまった所までは覚えてるんだけど…」





「千秋君が綾を家までおんぶしてくれたんだよ」





「え?」





千秋先輩が?





「『すごい熱だから早く寝かせろ!』って。
あんな焦った千秋君見たの、初めてかも」





「そうだったんだ…」




絶対重かったと思うし、公園までは結構遠いのに…


私だって気づいてくれたんだ。

それだけで、嬉しい。





「ごめんね」





「お姉ちゃん?」





「私が綾に余計なこと言ったから何かあったんでしょう?
綾が輝君の所に行ってから全然帰って来なかったから
輝君に連絡したら『俺があやを混乱させたからだ』
って半泣きになってるし…」





「お姉ちゃんのせいじゃないよ!輝のせいでもない!私が鈍感なせいで周りの人を傷つけてきたから…!」




言ってるうちに涙が出てくる。


止まらない。





「輝を傷つけた!…多分、これから愛海ちゃんだって傷つけちゃう…」





「綾…」





「ごめん、お姉ちゃん。しばらく1人になってもいい?」




「…下にいるから、しんどくなったらいつでも言うんだよ」





「ありがとう…」
< 54 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop