千秋先輩。その鈍感、本気ですか?
「…ねぇ。大丈夫?」



倉庫の中から人の声。


七菜先輩?





「!!」




輝がドアの手を瞬時に引っ込める。


「何、どうしたの輝…



少し開いた倉庫の隙間から人影が2つ見える。




ハグしてる!




男の人の方は顔が見えないけど女の人は七菜先輩だ。


(七菜先輩、バスケ部内に彼氏いたんだ…)


他人事なのに、ドキドキする。


身長差がいい感じだ。



〈輝、知ってた?〉


 
隣の輝に耳打ちすると、
輝はびっくりした様子で私の声も聞こえてないみたいだ。


ちょっとしてから輝は気づいたみたいで 


〈あや。戻るぞ〉


と慌てて出ようとする。


〈でも湿布とか…〉



〈それはドアの前に置いといたらいいだろ!
いいから早く!〉

 
輝に腕を引っ張られて倉庫を離れていく。
 



「…千秋。本当にこのこと、みんなに言わなくていいの?」




でも、七菜先輩の声で足が動かなくなった。








…千秋先輩?








そのまま会話は続く。





「私はやっぱりみんなに言ってほしい」





「言ったって別に何も変わらないだろ。なら内緒でいい」





「言ったら諦めてくれるかもしれないし!」

 


「七菜。勝負するって言ったのは俺だ。
お前に不安な思いさせといて申し訳ないって思うけど、俺は輝と勝負するよ」





「千秋…」





輝に告白された時みたいに混乱してて状況が飲み込めない。

千秋先輩と七菜先輩?



勝負、諦める、不安な思い…2人は付き合ってるの?
足は前に進まないし、

でも振り返って2人を見る度胸も無い。

まだハグしてたらなんて思うと怖い。




〈何やってんだよ!行くぞ!〉




輝が動かない私をお姫様だっこして外へ逃げる。
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