千秋先輩。その鈍感、本気ですか?
「あや」





「輝…」




 
「一緒に帰れる?」





「分かった」




試合が終わり、
学校に帰ってきてすぐ解散したので
もう本当に誰も体育館にいなかった。





「負けたよ。俺」




輝がぼそっと呟く。





「…勝負には確かに負けたけど強豪相手に初心者が1年生が18点取るなんてすごいよ」


  
「だって俺努力したからね」




輝が立ち止まる。





「でも、諦める。あやも千秋先輩も愛海ちゃんも…バスケ部のみんなが好きだし。
これからはまた、最初の方は難しいかもしれないけど幼馴染に戻りたい…って、勝手だよな。俺。
自分から関係めちゃめちゃにした癖に」





「そんなこと無いよ」




輝がぱっと顔を上げた。





「輝の気持ちには応えられないけど、輝は優しいよ。全然勝手なんかじゃない。
…好きになってくれて、本当にありがとう」





「…うん。
あやも、ちゃんと返事してくれてありがとな。
じゃ、俺こっちで待ち合わせしてるから!また明日!」





輝は私の方を見て笑った。


私が今までに見たことない柔らかい笑顔で。
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