キスから始まる……!「イケメン御曹司とキスして、フォーリンラブ!」

「え……」

びっくりしている私の肩にすかさず腕をまわして、

「……帰れ。俺の店で、女性への無作法は許さない」

言い放った。

「…なんだよ! 偉そうに!」

市原さんが声を荒げて、彼につかみかかる。

拳でギリギリとシャツの襟首を引き絞るのを、冷ややかに見下ろして、

「……たった今言ったはずだ。マナーのなってない奴は、許さないと……」

低く声を落とし、上に立つ者の凄味すら感じさせる気迫で口にした。

「…くっ、そ…!」

勝てないと知ると、途端におどおどと目を泳がせ、つかんでいた襟をあっさりと離して、

「…おまえも! 彼氏がいるんなら、初めから言えよっ!」

捨て台詞のようにも吐くと、足音をわざとらしく響かせて歩き去った。


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