キスから始まる……!「イケメン御曹司とキスして、フォーリンラブ!」

……名前で呼ばれるなんて、お得意様ってことだよね?

自分は入ったこともない店が、彼にとっては常連でもあることが信じられなくも思える。

やや呆然としている私を連れて、彼が通されたのは、店の奥にあるいわゆるお得意様専用のVIPルームだったーー。

うわ…こんな所、本当にあるんだ……。

テレビドラマとかでしか見たことがないような場所に、驚きが隠せない。

居心地が悪いっていうか……またしても感じる場違い感に、キョロキョロと辺りを見回す。

「そこに座ってもらえるか?」

ひとつだけ置かれているテーブルセットに、座るよう彼から促されると、

店員さんがすかさず椅子を引いて、手まで添えてくれて、呆然としつつも脱力するように腰を落とした。

(扱いが、なんかもう……)

味わったこともないセレブ感に、挙動不審にさえなりそうになる。


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