イノセント

部屋を出て、屋外に出るよう指示され その通りに行動する。

連れられた先には馬車があった。

死刑囚は 馬車の荷台に乗せられ 死刑の執り行われる広場まで運ばれる。

その道中で死刑囚を目にした国民は 落ちている石を拾い その石を死刑囚めがけて投げる、といった風習がある。

過去には その石が目に命中したために 眼が潰れた者も居た。

同じ人間として その痛々しい姿を見ていられなかった。

というのも、死刑執行の際には必ず王族の者が立ち会うというきまりがあり 私自身その場に立ち会ったことがある。

今では真逆の立場。

自分が処刑される立場になる日が来るとは 本当 夢にも思わなかったな。

一昨日の時点ですら、そんなことは思ってもみなかった。

獄に入ってからは 天命が尽きるまで 奴隷として働くものだと思っていた。

人生何が起こるか分からない、とは よく言ったものだ。

案の定 荷台に乗るように指示され 荷台に坐った。

その後、手を身体の背後で組まされ ロープで縛られた。
身動きが取れないよう 太腿の上には石板を3枚置かれた。

馬は広場を目指して歩み始めた。

行く道行く道で石を投げられる。

ただ前を向き続けた。

服を着ていると言っても腰辺りから布を一枚巻いただけの格好。

寒さは厳しいし、生肌に直接当たる石は痛い。

何よりも 罪人に対して石を投げる行為、その根元には私の存在を真っ向から否定する思いがある、ということが何よりも苦しい。
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