イノセント
広場の大時計は11:30過ぎを指している。
多くの国民たちが集まっている。
元々、死刑執行の際 ギャラリーは多く集まるのだが 広場にこれ以上 脚を踏み入れる場所がないほどまでの人が押し寄せている。
……(元)王族が処刑されるのは この国では初めての事だからだろう。
私に向けられているのは 好奇の目。
此処まで来ると もう誰も石を投げたりはしない。
手首はロープで縛られたまま、腕を引かれ 荷台から降ろされた。
その場で立ち止まるように言われている為 まじまじと処刑台を見つめる。
ステージの上に設置されている処刑台。
高くからぶら下がっているロープ。
その足元には 絶命した後に首を切るための斧が用意されている。
いざ目の当たりにすると恐怖しかない。
私が処刑台を見ている間に最低限しか動かないように足首をロープで固定された。
腰にもロープを巻かれ、役人がその手綱を握っている。
逃亡防止のためか。
役人に手綱を引かれ、ステージに登る。
中央にまで誘導すると 役人は手綱を 側にあったらしい かぎに引っ掛けて 降りていった。
周りからは大きなブーイング。
目の前には頭が入るほどの大きさのロープの輪。
唇を噛んだ。
……怖い。苦しいのは嫌だ、怖い。死にたくない。
目から涙が零れる。
集まっている国民たちには 私の涙が見えてしまったらしい。
ブーイングが止み、辺りがざわめいた。
その様子から 死刑場の看守に見つかってしまった。
看守は私の方に近づいて来、そのまま頭を殴った。
手を地につけ 四つん這いになるように言われ、指示された通りの格好をすると鞭打ちされた。
腰に布を巻かれただけの上裸の状態で背中を鞭打ちされたから、痛い。
鞭打ちなんて この数年で何度も経験してきたが、今までに無く 痛かった。
「……っ、はぁ……」
と思わず、声が漏れ出た。
"五月蝿い" と何度も鞭で打たれた。
歯を喰いしばって、我慢をする。
……涙は相変わらず 流れたままだが。
皆、息を呑んだ。
まさか、元王子が鞭打ちされるとは思っていなかったのだろう。
「同情を乞うんじゃない。」
「……そのようなつもりではありませんが、申し訳ありません。」
看守に謝った。
フンーと鼻を鳴らすと、乱暴に私の腕を掴み上げた。
無理矢理に私を立たせると、そのまま降りていってしまった。
「Victor王子……」
「本当に殺されてしまうのかしら。」
そんな声が私の元まで届く。