イノセント
「あと5分で鐘が鳴る、言い残すことは?」
「……言いたいことはたくさんあります、拙い言葉ではありますが 話しをさせていただきます。
家族から絶縁された 一介の囚人の身である私の最期を見届けに たくさんの方々が来て下さったこと、大変 有難く思います。
皆さんの期待を裏切るような、気持ちを踏み躙るようなことをしてしまいました。
今更許されようなんて思っても居ません、許して頂けなくて構いません。
それ程の事をした、という自覚もあります。
私にはまだ国王となるまでの裁量はありませんでした、父上……このように呼ぶのは彼方に対して失礼に当たりますね、兎も角 私はVelumondo様に在位し続けて頂きたかったんです。
紛れも無い本心ですが 其れ等は全て 今となっては言い訳に過ぎません。
今、私が何を言おうと 全て嘘に聞こえるだろうと思います。
罪人の言葉に信憑性なんてない、そんなことは分かっています。
それでも、聞いて欲しい。
皆様の幸福な未来を、この国の安泰を、この世界の平和を……私は願って居ります。
明日の身も分からないような世界ではありますが、どうか明日に希望を持って、幸せを願い続けて、生きてください。
直に生を終える私から この先を生きる皆さんへの唯一の願い……、これは 約束です。
よろしくお願いします、今まで 有難うございました。
ご静聴有難うございます。」
そして、私の首にはロープがかけられた。
あとは滑車のハンドルを回すだけ。
ハンドルを回すと私の身体は浮き上がり 自然と首が締まる。
そうして、数分の苦しみの後に 私の息は絶える。