イノセント

Shalloutに促されて 用意された椅子に座る。

下着しか身につけていない状態で 肩にバスタオルを掛けられた。

膝の上にもバスタオルを掛けてから理髪用具の用意をするShallout。

「変になっても、文句は言わないで下さいね?約束ですよ?」

「言わないよ、私がShalloutに頼んだのだから。」

サクサクー、と慣れた手つきで髪を切っていくShallout。

切られた髪が重力のまま、落ちる。

私は何も口出しせずに、任せた。
1番短いところだと 生え際のあたりまで切られている。

あまり、短髪にしたことはないから 首元がやけに涼しく感じる。

前髪は、顎の辺りで揃えられ、その後、髭を剃り 眉を整えてくれた。

「前髪だけ長いと、暗い印象を受けますね。」

「そうか?」

"動かないでくださいね?" と一言 言ってから Shalloutは私の前髪をオールバックで固めた。

「はい、できましたよ。

……きっちりとした髪型をしている王子を見るのは 初めてのような気がします。」

「大袈裟な……、そんなことはないだろう?」

「そう言えば、王族から追放された時に見ましたね。」

「その時のことはもう思い出さなくていいよ、Shallout。」

Shalloutは涼しい顔をして 散った髪の片付けをする。

Shalloutが部屋にいる間に私が居なかった期間 起こったことについて聞いた。

獄の中には そのような情報は入って来ないから。

でも、王宮の侍従をしているShalloutの元には 他の国民と同じ程度のことしか分からないらしく 込み入った話までは聞くことができなかった。

代わりに 私が居なかった5〜6年間の王宮で起こった話を聞かせてくれた。

私が獄に入って1年ほどした頃、王宮では新たな命が産まれたらしい。

Abelの子だと Shalloutは言う。

良い話を聞かせてもらった。

私の知らない間に、私は叔父になっていたのだな。

未だ見ぬ甥っ子の姿を思い浮かべる。

きっと、愛らしい子なのだろう。

「色々教えてくれて ありがとう。」

掃除が終わり、Shalloutは部屋から出て行った。

"良い年齢なのだから、片付けくらい 自分で出来るようになって下さいね" と言い残して。
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