イノセント
「今日の昼、教会の鐘がなる時間 絞首刑を執行することが決定した。
それまで、己の罪を懺悔していろ。」
我が国では絞首され息絶えた後、頭と身体が離れるよう 首を斧で切断される。
頭と身体が離れた状態であることで、頭は身体を、身体は頭を探し迷い続ける為 死後も尚 魂が休まらないとされている。
身体は直ぐに焼却処分され、頭は暫く 死刑場の前に晒される。
晒された後の頭は 原型が分からなくなる程 にまで叩きのめされた後 ゴミと一緒に処分される。
死後も尚、辱めを受けなければならない。
不名誉なことだ。
下がるように言われ、牢獄内の定位置へと戻る。
「絞首刑、って聞こえたぞ?」
周りの囚人達が集まってくる。
一括りに囚人、とは言っても、罪の重さは人それぞれに異なると思う。
殆どのものが 人を殺めた経験があることに違いはないが。
気まぐれで人を殺めた殺人犯も居れば、大切な誰かを守る為に人を殺めた殺人犯も居る。
だが、そんな事情は罪の重さには関与しない。
皆等しく 一等級罪人。自らが事切れるまで奴隷として生きる。
そのことに変わりはない。
「今日の昼、処刑だそうです。」
「王族が処刑されるのは初めてじゃないかい?」
「親子の縁は切れているので、私を王族の一員と呼べるのかどうか 解りません。」
……とは言え、どのようにすれば 親子の縁を切ることができるのかなんて 私には到底分からないが。