生きていくこと
そのあとちょうど看護師さんが来たので、お母さんが着いたことを伝えると、15時から先生の話を聞くことに。




─説明室にて



「朝会った時より、調子よさそうだね。若さだねー」
なんて先生の話からはじまり




「それで今回のことなんだけれど、ことはさんは何らかの原因で心臓の機能が弱っている状態、すなわち心不全になっています。全身に血液を送るポンプの機能をしている心臓が弱っている状態なので、身体に水が溜まって息が苦しくなったり、ドキドキと動悸がしたりといった症状が出たのです。
……ここまででなにか聞いておきたいことありますか?」




母「私は昨日、ご説明していただきましたので、いまは大丈夫です。」

やっぱりね。私、わりとまじめに看護学生やってたからそのくらいはわかる。
「私も、とくにありません」




「それでは続けますね。このレントゲンの写真をみるとわかりやすいかと思いますが、左が入院時、右が今朝のものです。入院時は全体的に白っぽく見えますが、今朝には白っぽさが改善しています。
これは溜まってしまった水をおしっこを出しやすくする薬を使って身体から出す、呼吸を助ける治療をして、肺に溜まっていた余分な水分を出す治療をした効果です。
今は、血液検査やレントゲン、超音波等の検査を行い、原因を見つけているところです。」




利尿とNPPVの使用。よくある心不全の治療ってかんじ。
「わかりました」とりあえず返事しとく。




「それで、もっと詳しく調べるために心臓のカテーテル検査を受けていただきたいです。ことはさんはまだお若いので確率は低いのですが、冠動脈という心臓に血液や栄養を送っている血管に狭くなっているところはないか調べると言う目的と、心臓の筋肉のほんの一部を取って、その状態を調べる目的があります。」




母「筋肉の一部を取るって、危険じゃないんですか?」




「筋肉の一部を取る、というととても危険なふうに感じてしまいますよね。取るのはほんの一部で痛みもありませんが、たしかに合併症のリスクもあります。ここに書いてあるものが代表例です。」




母「出血とか、心停止もあるんですね……」


お母さん、心配してる。
普通そうだよね。でもまあ、検査しないと診断も確定しないし、検査の合併症のリスクより検査しないで診断つかず治療もできず悪化するリスクの方がまずいだろうな。
なんて、自分のことなのに、一歩引いて分析してみる。




「お母さん、検査しないで治療できない方が結果的に良くないよ。合併症はつきものだから。もしなったらそのときはそのとき。」
自分が死ぬかもしれないってことが現実だと思えてないからこんなこと言ったんじゃない。
ちゃんと、わかってる。




母「そんなこと言われたら、お母さん悲しいよ。…主人にも話してから決めさせて下さい」




「もちろん、いいですよ。お父様にも私から説明差し上げることもできますので、話し合ってみて下さい。」




私の知るかぎり、今までこんなことなかった。いつだってお母さんはしっかりしていて決断力があった。
それほどまでに動揺しているの、、?
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