生きていくこと
ことはが恐れていた実習は、素敵な患者さんと出会いながら順調に進んでいった。




急性期実習では、術前に不安でたまらない中、快く学生を受け入れてくれた患者さん。


術後は合併症予防のため病棟を1日に何周も一緒に歩いていろんな話をした。「手術のときずっとそばにいてくれて、麻酔をかけられるときに私の手を握って“そばについています”って言ってくれた時は涙が出るくらい安心したよ」なんて言ってくださったときは嬉しかった。




終末期実習では、告知済みでBSC方針の患者さんを受け持った。
お話が好きで体が辛いなかでも、たくさん素敵な話を聴かせてくれた。自分がもう長くないことを知っていて、涙を流す姿を見た時は、何も言えず肩をさすった。


終末期看護では、“その方の願いを叶える”とよくいわれれる。他の学生の受け持ち患者さんの中には着物の先生だったから着付けをしてあげたいという願いを叶えるために体調の波を観察し、一番いい時を患者さんと一緒に計画して着付けをしてもらった学生もいた。ことはは倦怠感が強い方だったから苦痛をできるだけ少なくできるように努めた。はじめはそれだけしかできないことに無力さを感じていたけれど、先生も指導者さんも「みんながみんなドラマチックな看護ができるわけじゃない。苦痛を取り除いて差し上げることは大切な看護だよ」そう教えてくれた。苦痛を最小限にすることも“願いを叶えること、希望を支えること”になっているんだと感じた。


受け持ち期間中に患者さんがお亡くなりになった時は涙があふれでてきた。泣くなんて、何年かぶりだった。今までがんばってこられた、たくさんのことを教えてくださった患者さんに感謝の気持ちを持ってエンゼルケアをした。ケア中は自然と声かけができてお見送りまですふことができた。


この体験がことはを成長させてくれた。




慢性期実習では、慢性心不全増悪で入院になったしょうゆ大好きな患者さん。




子どもの頃からの喘息が何度も顔を出すことがあったけれど、夏休み前の実習を終えることができた。




もちろん穂乃里も。
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