dolce*
「お前またあそこにいたのな。」
部室の隅に一箇所だけ、午後になると暖かい日の射し込む所がある。
私のお気に入りの場所。
「あったかいんだもん…。」
「あったかいから眠くなって発声遅刻するんだろ。」
「まぁそうですけど…。」
翔璃は演劇部員。同じ高校一年生で演劇に3人しかいない男子のうちの1人。
「カケルは、またアオイのお世話かー?ご苦労なこったなー」
今翔璃に話しかけているのは演劇部の二年生、石崎先輩。石崎先輩は二年生唯一の男子。
今まで付き合った人数はは両手に収まらない!(本人談)という、見た目からは想像し得ないチャラさで私は初め驚いた。
黒髪で目にかかるほどの長さの前髪にフレームの細い黒縁メガネ。陰か陽かと言われたら陰キャラに分類される見た目だ。とても彼女が沢山できそうには見えなかった。
「いーじゃんいーじゃん!アオイとカケル、いいコンビじゃない?」
「「!?」」
部長の思いがけない言葉に固まってしまった。
部長の紗渚先輩。女の先輩だけど、スタイルも良くて声もちょぴり低くてすごくかっこいい先輩。
「紗渚先輩やめてくださいよー。」
翔璃はそんなこと言ってるけど、実際どう思ってるの?
───今、私をどう思ってるの?