宵の朔に-主さまの気まぐれ-
「相性がいい」
耳元でこそりと囁かれた低い声色に、凶姫は朔の額をぺちりと叩きながら荒い息を整えていた。
「だからこそ赤ちゃんもすぐできたんでしょうね」
「そうかも。うちは母様の代から多産だったんだけど、俺たちはどうだろう?うちは兄弟が多いから大所帯がいいな」
「ちなみに私は一人っ子だからどうかしら。ねえ朔、お願いがあるんだけど」
「うん。なに?」
腕枕をしてやりながら布団を身体で包みつつ額に張り付いた髪を払ってやって頷いた。
「柚葉のお父様たちを捜してあげてほしいの。娘をひとり置き去りにしなければならなかったほど切迫していた状況だったのよ。生きていると分かればきっと会いたがるはずだわ」
「柚葉がそれを望むなら。…生きていると分かったとしても…身は売っていないとしても、遊郭にまでその身分を窶したんだ。顔向けができるか?」
「分からないわ。だけどせめて柚葉が生きていると教えてあげてほしいの。そしていい夫にも巡り合えそうだって」
「いい夫?……ああ、輝夜のことか?あいつは…うん、まあ…嫁になる女は少し可哀想ではあるな」
「そうね、彼、変態だものね」
異常なまでに朔にべったりな輝夜の文句をふたりで言いながら笑い、それがもし現実になったならばの話を想像してみた。
「柚葉が輝夜に嫁いで、芙蓉が俺に嫁ぐ…。同じ屋敷に住んで、お前たちふたりは仲良く騒ぎながら子を育てる…それって理想なのかな。俺の妄想?」
「いえ、可能だと思うわ。柚葉も輝夜さんと話している時なんだか感情が露わだし、輝夜さんだって楽しそうじゃない?きっとあのふたり、うまくいくわよ」
「輝夜の旅が終わればきっと…。明日終わるといいな…」
すうっと寝入ってしまった朔の頬にちゅっと口付けをした凶姫は、身体を寄せて同じように目を閉じた。
今の話が現実になったらどんな素敵だろう、と思いながら――
耳元でこそりと囁かれた低い声色に、凶姫は朔の額をぺちりと叩きながら荒い息を整えていた。
「だからこそ赤ちゃんもすぐできたんでしょうね」
「そうかも。うちは母様の代から多産だったんだけど、俺たちはどうだろう?うちは兄弟が多いから大所帯がいいな」
「ちなみに私は一人っ子だからどうかしら。ねえ朔、お願いがあるんだけど」
「うん。なに?」
腕枕をしてやりながら布団を身体で包みつつ額に張り付いた髪を払ってやって頷いた。
「柚葉のお父様たちを捜してあげてほしいの。娘をひとり置き去りにしなければならなかったほど切迫していた状況だったのよ。生きていると分かればきっと会いたがるはずだわ」
「柚葉がそれを望むなら。…生きていると分かったとしても…身は売っていないとしても、遊郭にまでその身分を窶したんだ。顔向けができるか?」
「分からないわ。だけどせめて柚葉が生きていると教えてあげてほしいの。そしていい夫にも巡り合えそうだって」
「いい夫?……ああ、輝夜のことか?あいつは…うん、まあ…嫁になる女は少し可哀想ではあるな」
「そうね、彼、変態だものね」
異常なまでに朔にべったりな輝夜の文句をふたりで言いながら笑い、それがもし現実になったならばの話を想像してみた。
「柚葉が輝夜に嫁いで、芙蓉が俺に嫁ぐ…。同じ屋敷に住んで、お前たちふたりは仲良く騒ぎながら子を育てる…それって理想なのかな。俺の妄想?」
「いえ、可能だと思うわ。柚葉も輝夜さんと話している時なんだか感情が露わだし、輝夜さんだって楽しそうじゃない?きっとあのふたり、うまくいくわよ」
「輝夜の旅が終わればきっと…。明日終わるといいな…」
すうっと寝入ってしまった朔の頬にちゅっと口付けをした凶姫は、身体を寄せて同じように目を閉じた。
今の話が現実になったらどんな素敵だろう、と思いながら――