宵の朔に-主さまの気まぐれ-
これは困ったことになった…

身を委ねてくれるかと思ったら突然抵抗されて拒絶されて、やる気満々だったのにしょげた輝夜は噛まれて血の滲む唇に触れて柚葉と同じように壁を背にして座り直した。


「その手順を一日でこなすというのは…」


「なしです。私が…あなたに抱かれたいと思うまで待って下さい」


…それまでになんとかこの小さい胸を大きくしてみせるから。


――心でそう輝夜に訴えて、噛んでしまった唇を袖でちょんと触った。


「いや…ですか?」


「いやというか、あなたの意思は尊重したいです。私も今日はじめて欠けていたものを取り戻したので時期尚早だったと言いますか…ごめんなさい」


気が逸って無理強いしてしまったことを謝った輝夜は、ほっとして笑みを見せた柚葉の頭を抱いて肩にもたれ掛からせた。


「あなたは疲れているんでしたね。お嬢さん、できるだけ早くあなたに‟抱かれたい”と言わせるよう頑張りますよ。覚悟しておいて下さ…お嬢さん?」


これ以上何もされることはないと安心しきった柚葉から寝息が聞こえてふっと笑った輝夜は、柚葉を抱き上げて床に寝かせると、はだけた胸をちらり。


「まさか…気にしているのかなあ?」


それすら可愛いと思えるのだが、もしかしたら本人にとってはある意味死活問題かもしれない――


「寝ているうちに私が揉んで大きくするというのは」


口に出してみて自分でふふふと笑ってみた輝夜は、ちゃんと身体に布団をかけて部屋を出ると居間に戻った。

そこには朔と凶姫が風呂から戻って来ていて、こちらはこちらで凶姫がぐったり。


「おや、どうしました?」


「ちょっと悪戯しすぎた。お前はその唇どうしたんだ?」


「私もまあちょっとした悪戯をしまして怒られました」


「その話詳しく」


「兄さんこそ詳しく」


兄弟ふたり、含み笑い。
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