宵の朔に-主さまの気まぐれ-
出産の時までにすべての準備を済ませなくてはいけない。
全国各地に散らばった弟妹たちに召集をかけたり、縁のある者たちに招待状を書いたり、そして輝夜が危惧している両親への報告など今からてんてこまいの状態になる。
ましてや一組ではなく二組同時の祝言なのだから。
「明日なんて言ってられない。お前たちは今から父様たちに会いに行け。反対なんてされないから安心しろ」
「ええ、分かってはいるんですが…億劫だなあ…」
「お前は…いや、俺もだけど母様には本当に弱いからな。気張って行って来い」
「はい」
緊張でかちこちになっている柚葉の手を引いて居間から出て行った輝夜たちを見送った朔は、戸棚から帳面を引っ張り出してぱらぱらめくっている雪男の手元を覗き込んだ。
「それはなんだ?」
「ああ、これは主さまたちの弟姉たちが今居る場所が書いてある。何せ兄ふたりが同時に祝言を挙げるんだから、そりゃ大喜びするだろうなあ」
――雪男にとっては全ての子たちは自分が教育してきた子たちであり、久々に会えるのを楽しみにしているのが分かる。
朧はそんな嬉しそうな雪男の腕に抱き着いて一緒に帳面を見ていて、凶姫はまだ会ったことのない朔の弟妹たちに思いを馳せた。
「朔、私…あなたの嫁として認めてもらえるかしら」
「全然問題ない。むしろその腹を見て驚くだろうし喜ぶんじゃないかな」
朔が膨らんだ腹に触れる度、ぽこんと掌に感触が伝わってくる。
腹に耳をあてていると、まるで笑い声が聞こえるような気がして、暇があればそうして凶姫から笑われていた。
「芙蓉、少し散歩しないか?じっとしているより少し動いた方がいいらしいから」
「ええ、天気も良いし、そうしましょう」
「じゃあこっちは進めておくから」
万能の雪男に頷いて笑った朔は、凶姫の手を引いて裏庭に出かけた。
見せたいものがあった。
全国各地に散らばった弟妹たちに召集をかけたり、縁のある者たちに招待状を書いたり、そして輝夜が危惧している両親への報告など今からてんてこまいの状態になる。
ましてや一組ではなく二組同時の祝言なのだから。
「明日なんて言ってられない。お前たちは今から父様たちに会いに行け。反対なんてされないから安心しろ」
「ええ、分かってはいるんですが…億劫だなあ…」
「お前は…いや、俺もだけど母様には本当に弱いからな。気張って行って来い」
「はい」
緊張でかちこちになっている柚葉の手を引いて居間から出て行った輝夜たちを見送った朔は、戸棚から帳面を引っ張り出してぱらぱらめくっている雪男の手元を覗き込んだ。
「それはなんだ?」
「ああ、これは主さまたちの弟姉たちが今居る場所が書いてある。何せ兄ふたりが同時に祝言を挙げるんだから、そりゃ大喜びするだろうなあ」
――雪男にとっては全ての子たちは自分が教育してきた子たちであり、久々に会えるのを楽しみにしているのが分かる。
朧はそんな嬉しそうな雪男の腕に抱き着いて一緒に帳面を見ていて、凶姫はまだ会ったことのない朔の弟妹たちに思いを馳せた。
「朔、私…あなたの嫁として認めてもらえるかしら」
「全然問題ない。むしろその腹を見て驚くだろうし喜ぶんじゃないかな」
朔が膨らんだ腹に触れる度、ぽこんと掌に感触が伝わってくる。
腹に耳をあてていると、まるで笑い声が聞こえるような気がして、暇があればそうして凶姫から笑われていた。
「芙蓉、少し散歩しないか?じっとしているより少し動いた方がいいらしいから」
「ええ、天気も良いし、そうしましょう」
「じゃあこっちは進めておくから」
万能の雪男に頷いて笑った朔は、凶姫の手を引いて裏庭に出かけた。
見せたいものがあった。