宵の朔に-主さまの気まぐれ-
次に三男が到着すると、朔と輝夜を足して割ったようなこれまた色男で、凶姫と柚葉は俄かにざわついて色めき立っていた。


「ちょ…今まで居なかった感じの方ね。どちらかと言うと朔似かしら…」


「いえでも笑い方とか口調は鬼灯様似ですよ。…え、つまり一粒で二度美味しいっていう…?」


「朔兄、輝兄、この度はおめでとうございます。素敵な娘さんたちと出会われたようで」


「ありがとう。天満(てんま)、お前が各地で起きている争いごとをまとめて知らせてくれているおかげでこちらはだいぶ助かっている」


天満は目元をやわらげて微笑み、じいっと見つめてきていた暁に両手を伸ばした。

すると暁が抱っこされたがっているようにしてもがいたため、凶姫がそっと天満に暁を差し出すと、すんなりと抱っこされて欠伸をして寛いだ。


「いやあ、可愛いなあ、貰ってもいいですか?」


「だ、駄目ですっ」


「冗談ですよ冗談!そういえば如月が先に着いているはずですけどどこに……ああ、その顔で大体把握しましたもう大丈夫です」


聡い天満が兄たちの顔色を見て納得すると、庭で洗濯物を干していた朧に手を振って今度は柚葉に笑いかけた。


「あなたはお子の方はまだで?」


「わ、私はまだです」


「へえ?輝兄もしかして奥手…じゃないですよね」


「ええもちろん違いますとも。ところで今日は大切な話をしますから気を引き締めて下さいね」


「ああ、うちのことですね、分かりました」


続々とその後も朔の弟妹たちが到着し始めて、凶姫は頭を抱えながら練って考えた挨拶の内容を必死に思い出しながら暗唱を繰り返した。
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