ロッカールーム
会える場所
真夜中の2時前。


旧校舎の中はシンと静まり返り、梅雨時期だというのにヒヤリとした空気が流れていた。


入り口で足を止めてしまいそうになった弟を見てあたしは手を伸ばした。


弟のサクは体の大きさの割に小心者で、今日ここへ来る事を決めた時もまだ渋っていた。


暗くてサクの顔はよくわからなかったけれど、きっと今も青ざめているんだろう。


「大丈夫だって。ちょっと試すだけなんだから」


そう言いながらあたしは旧校舎の木製の階段を上がっていく。


「姉ちゃんは怖くないのかよ」


あたしに手をひかれて歩きながらサクがそう聞いて来た。


「そりゃあ少しは怖いけど……」


怖がってばかりじゃ前に進めないから、足を進めるしかないじゃないか。


そう言おうと思ったけれどやめておいた。


上がり切った先に見えた『ロッカールーム』という文字に目を奪われる。
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