ロッカールーム
琴は巨漢だから、食べれば食べるほど醜くなる。


けれど琴はあたしの言葉をすっかり信じ込んでしまったようで、目を輝かせている。


「あたしも、大食いブームなのかなって思ってたんだよね!」


「そうだよ琴。学校では食欲をセーブしてるんじゃない? それって損してるとおもうなぁ。事は細くて可愛い大食いなんだから、あっという間に人気者になれそうなのに」


「人気者……あたしが?」


琴が自分を指さしてそう聞いてきた。


今まで何の脚光も浴びて来なかったのがよくわかる表情をしている。


「うん。彼氏だってできちゃったりして?」


あたしがそう言うと琴がポッと頬を染めた。


「……実はあたし、今まで付き合ったことないんだよね」


恥ずかしそうにうつむいて琴がそう言った。


前からその体型なら、彼氏ができなくて当たり前だ。


そう思うけれど、グッと言葉を押し込んで驚いた顔を浮かべた。
< 122 / 217 >

この作品をシェア

pagetop