ロッカールーム
もっと、たくさん
教室中がモヤに包まれた今日、お母さんとは3時間会話をできるようになっていた。


「あれだけモヤが出てたのに、3時間か」


サクが軽く舌打ちをしてそう言った。


正直、あたしも同じ気持ちだった。


もう少し長く一緒にいられると思っていた。


「そんなこと言わないの。あなたたちが頑張ってくれたモヤは少しずつ溜まっていっているのよ。もしかしたら、ロッカーから離れられる日も来るかもしれないんだから」


お母さんはそう言い、サクの手をにぎりしめた。


「そっか。そうだよな」


お父さんとお母さんがこのロッカーから離れること。


それがあたしたちの目標だった。


「ここから離れることができたら、またみんなで暮らせるのよ」


お母さんはそう言って、愛しそうな視線をあたしとサクへ向けたのだった。
< 129 / 217 >

この作品をシェア

pagetop