ロッカールーム
暗闇の中で見たそれはしっかりと記憶されていた。


「知らないな」


サクが左右に首を振ってそう言った。


サクは本当に見ていないだけだ。


どうして花がロッカーの中まで知っているんだろう。


悪魔ってなんのこと!?


そう聞きたいけれど、取り乱してしまいそうで言葉にならなかった。


「ロッカーの悪魔は人間が会いたいと願う人の姿になって現れる。あなたたちはご両親を亡くしているから、あたしは心配していたの。



『ロッカールーム』の噂を聞けば悪魔を呼び出してしまうと思ってた」


花の言葉にはよどみがない。


今作り上げられた話しにも思えなかった。


サクがあたしを見た。


あたしは無言のまま左右に首をふった。
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