ロッカールーム
「1度悪魔に会えば次もまた会いたくなる。だって会いたいと願っていた人の姿で現れるんだものね。


強烈に恋しくなって悪阻ましい夜の旧校舎を怖いとすら感じられなくなる。そうなるともう悪魔の思うつぼ」


花はそこで一旦言葉を切ってあたしとサクを見た。


どうにか平静を装っているつもりだったけれど、花の目にはどう映っているだろうか。


「悪魔は人の汚い心を食べて力を強くする。言葉巧みに人間を操って汚い心を集めはじめる。あたしがイジメられるようになった原因も、全部あなたたちが作ったんでしょ? あたしは最初から気が付いていたわ。


やがて力を持った悪魔は外へ出てしまう。外へ出た悪魔はこの街全体を地獄へといざなうことができる」


花はお父さんのことを悪魔だと言っているのだ。


あれほど優しくてあたしたちを抱きしめるお父さんを、悪魔だと言っているのだ。
そう思うとふつふつと怒りが湧き上がって来るのを感じる。



花に何がわかるというんだろう。


同時に両親を失ったあたしたちの苦しみの、なにがわかるっていうんだろう。

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