ロッカールーム
確かにお金は必要だ。


両親がいなくなって遺産や保険はあるけれど、祖母はほとんどそれらに手をつけていない。


あたしとサクが必要なお金だからと、自分の貯金と年金でやりくりしているのだ。


「ちょっとお父さんに相談してみるね」


思わずそう言っていた。


昨日何度もお父さんに会う所を想像していたから、ポロッと口に出てしまった。


2人の顔が一瞬にしてこわばった。


「お父さんって……?」


カナにそう聞かれて慌てて「近所の人の事だよ。お父さんみたいな人で、相談によく乗ってくれるの」と言った。


背中から汗が噴き出す。


苦しい言い訳だったかもしれないと思ったが、2人は安堵の表情を浮かべた。


「なんだ、そう言う事か」


カナはそう言ってほほ笑んだのだった。
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