ロッカールーム
☆☆☆

「今日は誰も出てこなかったでしょ」


旧校舎を出ようとしたそのとき、後方から声をかけられてあたしたちはビクリと体を震わせた。


誰もいないと思っていた旧校舎の廊下にぼんやりと人影が見える。


月明かりに照らし出されたその人は、花だった。


「なんでお前がここにいるんだよ」


サクの口調が険しくなる。


「疑問に感じてるはずだから、教えてあげに来た」


花は全く怯えている様子もない。


「花は何を知ってるの?」


あたしは静かにそう聞いた。


心臓はドクドクと嫌な音を立てている。
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