ロッカールーム
「俺も、絵を褒めてくれた時本当にうれしかった」


弘樹が言う。


「でも、全部嘘だったんだよね?」


琴の言葉にあたしはなにも言えなかった。


違うとも、そうだとも言えない。


どうすればいいのか、もうわからなかった。


「悪魔の生贄に捧げるのはね、心が汚い人間じゃないとダメなの。だからあたしはすぐに解放されたよ」


花がそう言ってほほ笑んだ。


心の汚い人間……。


みんなの視線があたしとサクに集まっているのがわかった。


みんながジリジリとにじりよってくるのがわかる。


「いや……」


あたしは左右に首をふり、小さな声でそう言った。

< 210 / 217 >

この作品をシェア

pagetop