ロッカールーム
その気持ちはサクも同じようで、さっきからそわそわと動き回って落ち着きがない。


「お父さんに会えたらなんの話をする?」


そう聞くと、サクは「なんでもいい。なんでも話したい」と、答えた。


タイムリミットは1時間だ。


その間に自分が言いたい事を言わなきゃいけない。


そう考えると、やっぱり1時間という時間はとても短く感じられてしまう。


言いたい事なんて山ほどある。


次から次へと、湧き水のようにあふれ出してきている。


「小夜、時間だ」


サクに言われてあたしたちはロッカーの前に並んで立った。


「奥山太一、奥山太一、奥山太一」


お父さんの名前を唱え終えた瞬間、部屋の中の冷気が動いた気がする。


あたしはジッとロッカーの中を見つめた。


真っ暗な空間がグニャリと歪んだように見えた次の瞬間、お父さんが現れた。
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