ロッカールーム
だから心のどこかで期待していたんだ。


事故に遭ったのは別の人で、両親は無事なんじゃないかって……。


けれど、ニュース番組の中で両親の名前と顔写真を見た時、その期待は打ち砕かれた。


これは本当にあの車なんだ。


死んだのはあたしたちの両親なんだ。


まるで他人事のようにそう思っていたことを思い出す。


「大丈夫だよ、親父」


サクが震える声でそう言った。


あたしも何か言わなきゃと思ったけれど、言葉が喉にひっかかってなにも出てこない。


「俺たちなんとかやってるし。なぁ、姉貴?」


「そう……だよ。学校もいつも通り楽しい、お婆ちゃんの料理はおいしいし」


無理矢理そう言うと、情けないくらい声が震えていた。


泣くまいと思っていたのに、涙はどんどん溢れ出して来る。


目の奥がジンジンと熱くなって、視界が歪む。
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