ロッカールーム
こんな顔をしてちゃいけない。


心配をかけてしまうと思い、あたしは笑顔になった。


「なんでもないよ」


「そう? 無理しちゃダメよ?」


そう言って、お母さんがあたしの髪を撫でた。


その優しい感触に思わず表情が歪んだ。


あと10分で消えてしまうなんて嫌だ。


また会えなくなってしまうなんて嫌だ。


そんな気持ちが一気に溢れ出してきて、涙が滲んできてしまった。


「おい、姉貴」


泣きそうなあたしに気が付いて、サクがわき腹をつついてくる。


わかってるよ。


泣いちゃダメだってわかってる。
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