ロッカールーム
その表情はすでに硬い。


美桜にとって化粧道具は勉強道具よりはるかに大切なものなのだ。


それがないとなると、焦りはじめるのはわかっていた。


自分のロッカーを隅から隅まで確認し、体操着の袋の中まで確認する。


それでもピンクのポーチは出てこない。


「なんでないの!?」


焦りは次第に苛立ちに変わっていく。


そうこうしている間に花も登校して来て自分の席についた。


役者はそろった。


あたしは別の場所で友人とおしゃべりをしていたサクと目配せをした。


「さっきから何騒いでんだよ」


サクが美桜へ向けてそう聞いた。


「あたしの化粧ポーチがないの! サク、知らない!?」


「俺が知るワケないだろ」
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