嵐を呼ぶ噂の学園① とんでもない学園に転校して来ちゃいました!編
ビニール傘に雨が打ちつける。


ボタボタ…。


お願いだから止んでくれ!


こんな小さな傘じゃ、雨宿りになんねえんだよ!


…ってか、なんでオレが。


オレが星名さんの手当てをしないといけないわけ?



「なんか…すみません。こんな場所で手当てしてもらって」



膝、肘、頬、額…とあらゆる場所を擦りむいて星名さんは血だらけになっていた。


オレは仕方なく応急処置を施した。


星名さんは異常な心配性らしく、絆創膏は1パック、ウェットティッシュは2パック、ティッシュは街中でもらったものが3つ、カバンに入っていた。


オレはその中から必要なものをチョイスした。


惜しみなく使おう。


未開封のウェットティッシュを取り出し、ばい菌が体内に侵入しないように傷口を拭いた。



「…はい。自分でやれるところは自分でやって下さい」



ウェットティッシュを差し出すと、彼女は目に涙を浮かべながら受け取った。



「ありがとうございます…!」



オレに手当てしてもらえて良かったな。


キミは幸運だ。



涙が頬に染みて痛いのか、なかなか作業が進まなかったが、オレはその間にどんどん進めた。


もはや気分は医者。

 
仕事だから仕方なくやってます感が滲み出ている。


おそらく、彼女は気づかないだろうけれど。



よし、さっさと終わらせて帰るぞ!


気合いを入れて絆創膏を貼る作業に移行する。


一体いつぶりにこいつの姿を見ただろうか。


怪我ひとつしないから…って、それはウソか。


一回大怪我したよな、そういえば…。


追憶に耽りながらも手は動かし、開始5分ほどで全工程を終了した。


よし!これで自由だ!



「はい、できました。これで帰れます」



ふう~。


やれやれ。とんだ災難だったなぁ。


早く帰って風呂に入りたい。

 

大粒の雨に打たれてオレの体は冷え切っていた。



「ありがとうございます!でも…」



おい、今、なんて言った?


でもって言ったのか?



オレは聞き返す。



「でも?」

 

星名さんは両手をわなわな震わせた。


何が始まった?


まさかのパニック状態?


勘弁してくれよ…。



“オレ、帰るから”。


そう言おうとした時、彼女の口が動いた。



「あのぉ、大変おこがましいのですが…。そのぉ、おんぶ、いや…抱っこでも良いです!どうかわたしを見捨てず、送り届けてくれませんか?」



一体何を言ってるんだ?!


おんぶ?


抱っこ?


コイツ…バカ?


羞恥心とか、ないのか?


丸メガネのしたの大きな瞳が“マジ”だと言っている。


いやぁ、ウソだよな?


マジじゃないよな?


と思っていたら…



星名湖杜は…アスファルトに頭をつけた。


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