嵐を呼ぶ噂の学園① とんでもない学園に転校して来ちゃいました！編

星名食堂ののれんはしまわれ、電気も消えていた。


「今日のお礼をさせて下さい！」とか言われるかもしれないと心配していたが、それは無くなった。


よし、帰るぞ！



「じゃ、オレはこれで」


さっきまでのどしゃ降りとは打って変わって優しい雨が降り注ぐ。


天に向かってオレは再び傘を差した。



「青柳くん、待って下さい！」



星名さんの大声は近所迷惑の何物でもない。


深い眠りについた子どもたちを起こしてしまいそうだ。


運悪く、雨が弱まってオレの耳に彼女の声が届いてしまう。


いやいや振り返り、星名さんを半ば睨みつけるように凝視する。


今度は一体何だ？


オレの心をこれ以上かき乱さないでくれ！



「あのぉ…今度食堂に来る時は、タダにします！今回のお礼です！父にも伝えておくので、安心していつでも来て下さい！」



…ウソ。


マジで？！


いやぁ、これは…


これは…嬉しい！


ホントは飛び跳ねて喜びたかったけど、こんな夜遅くにウサギみたいにぴょんぴょんしてる場合じゃない。


星名さんならやりかねないが、オレは彼女とは違う。


常識をわきまえてる、オトナだから。


ひとまず礼だけは言ってとっとと帰るか。



「ありがとう」



オレのその一言に、星名さんは…ご褒美をもらった幼稚園児のような純真無垢な笑顔を浮かべていた。