嵐を呼ぶ噂の学園① とんでもない学園に転校して来ちゃいました!編
「俺と別れてほしい」



天使さんに薔薇のとげを刺すのは、さすがに胸が締め付けられた。


しかし、どうしようもない。


自分の気持ちに蓋をすることの方が、もっと辛いはずだ。


俺のしていることに文句を言う人もいるとは思う。


あんなにかわいくてキレイな今カノがいるのに満足出来ないのかって、同じ部活のヤツに言われた。


満足不満足とかそういう問題じゃないんだ。


たぶん、普通のヤツらには分かんない。


女で遊んだことのないヤツら、女に遊ばれたことのないお子ちゃまには、な…。



俺が言うだけ言って空を仰いでいると、美湖がぷるぷるの唇を震わせていた。



「ミコと別れて…そのあとどうするの?」



唇だけじゃなく、声も震えていた。


こういうのに、俺も含めて男は弱い。


これがやり手の女の子の常套手段だとわかっているけれど、何故だか心のど真ん中をバシッと射ってしまう。


揺るがされた的をいつまでも見ていては、次に行けない。

天使さんの矢を俺は、躊躇なく引き抜く。



「俺、美湖以上に守りたい人が出来たんだ。彼女は…きっと…亀の歩みで俺に近づいてくるよ。ってか、俺が近づける。彼女に、いろんな初めてを教えてあげるんだ」



美湖は、ふーっとひとつ、長いため息をついた。


それから天を仰ぎ、熱くなる瞼から敗北の結晶が落ちないように、必死に耐えていた。
 

それを可哀想だとは思ってはいけない。


可哀想だと手を差し伸べたら、きっと俺は次に進めない。


ずっとこのまんまだ。


宙ぶらりんな気持ちが一番人を傷付ける。


今までだってそうだった…。


俺の、この、どうしようもない性格のせいで、多くの人を裏切ってきた。




だからもう…


だからもう…



誰も傷つけたくない。



「美湖を振るなんて、さっすが昴!!…でもね、昴の好きな人のことは…一生嫌いかもね。…だって」
< 129 / 137 >

この作品をシェア

pagetop