嵐を呼ぶ噂の学園① とんでもない学園に転校して来ちゃいました!編
「お待たせしました。星名家のオムライスです」


「あっ……ありがと」



なんでまたオレはここに来てしまったんだ?


自転車屋で分かれるつもりが、またコイツに世話になっちゃってんじゃん。


…いや、待て。


コイツは最初からオレに飯を食ってもらって金をとることを企てていたんじゃないか?


だまされちゃ行けない。


コイツの恩?を借りるのはこれが最後だ。


次会った時は、何事もなかったかのように平然としなくては…。


んで、さっさと食べてとっとと帰ろう。



「いただきます」



コイツと店主の合作か?


普段は作ってもらうってことがないから…ーーちょっと嬉しい。


体内温度が1度上がった気がした。


出された中華用の銀スプーンでオムライスのド真ん中をすくった。


食べ物は基本的にド真ん中から食べるのがオレ流。


トンカツも真ん中から食べて端を最後にするし、カップアイスは真ん中をくりぬいてから周りを食べる。


気が付いた時には既にこの独特な食事スタイルになっていた。


…ってか、今気付いたんだけど、このオムライスになんか書いてある。



"ふぁいとです"



なぜ、ひらがな?


“です”完全に不要だよな。



文句を付けることはせず、黙々と口に運んだ。


すっげえ悔しいけど、星名湖杜の料理は…うまい。


オレの味覚にぴったり。


野球だったらドストレートを打ち返して柵越えホームランだ。


今日のオムライスは塩胡椒の加減がちょうど良いし、ベーコンの代わりに、恐らく焼豚の残りで作ったであろうケチャップライスがおいしかった。


卵もオレ好みのトロトロタイプ。


口の中で卵とケチャップライスがうまく調合し、絶妙なハーモニーを奏でていた。


うわ~、マジ…うまい…。


お代わり!とか言いたくなる。


最後に残しておいたとろふわの卵の端だけを口に入れ、その味を噛み締めた。


ああ…終わってしまった。


口の中に残るオムライスの感じを思い浮かべながら、ジワジワと出てきた唾液を飲み込んだ。



「ごちそうさまでした」



スプーンを置き、立ち上がった。


なのに…



「あっ!ちょっと待って下さい」



星名湖杜はまたしても邪魔して来た。


今度は何だ?


星名さんは厨房で何やらゴソゴソと取り込んでいた。



「足のケガ、ちゃんと手当てしていなかったのを思い出して…。これ食べながら痛みに耐えて下さい」



…は?


…へ?


オレ、まだ帰らせてもらえないの?
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