嵐を呼ぶ噂の学園① とんでもない学園に転校して来ちゃいました!編
「ああ!雨、降ってきました!」



青柳くんを見送ろうと外に出ると、再び雨が降ってきた。


さっきよりは穏やかな降り方だけど、いつまた強烈に降ってくるか分からない。



「…じゃあ」



「ちょっと待って下さい!傘、傘!」



私はお気に入りのピンク色にお花がたくさん描かれた傘を差し出した。


それなのに、青柳くんは口をへの字に曲げ、深刻そうな表情をしていた。


私…なんかやっちゃった?



「ビニール傘はないわけ?」



ビニール傘?


ワンコインで買えるコンビニの傘のこと?


あんな安っぽいヤツでホントに雨風凌げるの?


台風中継でいっつもひっくり返ってるじゃん。


でもお客様のリクエストには答えなくては…。


私の目に入ったのは、お客様が忘れていった傘を置くための専用傘立てだった。



「あっ……はいはい!これですね!お客様が忘れていったものですけど」



私はちゃんとリクエスト通りに出した。


でも青柳くんは受け取りを拒んだ。


曲がった口も直らない。


一体、私の何がそんなにいけないの?



「小雨だし、傘は大丈夫だから。んじゃ、バイバイ」



…えっ!


ちょっと、待って~!



追いかけようとしたら、水たまりで滑ってそのまま地面に倒れ込んだ。


制服がビショビショに濡れ、白いシャツが茶色く変色してしまっていた。



あ~あ、最悪だ…。



どうやら私には他人の心配をする権利はないらしい。


雨に打たれながら、自分の言動を省みたのだった。

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